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「バズワードに惑わされず、スタートアップしろ」 - Y Combinator、500 Startups、Stripeが集ったサンフランシスコのフィンテックミートアップ レポート

こんにちは。インターンの加藤です。 先日サンフランシスコで開催された、Empire Startupによるフィンテックのmeetupに参加してきました。

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『フィンテックのスタートアップに対して、アクセラレーターはどのような役割を果たすことができるのか』というテーマで、Y CombinatorのAaron Harris氏(写真左)、500 StartupsのSheel Mohnot氏(写真左から2番目)、モデレーターとしてStripeのChristina Cordova氏(写真右から2番目)が登壇しました。

登壇者のAaron氏とSheel氏は共にアクセラレーターのパートナーを務めており、さらにSheel氏はフィンテック領域で2つの会社を設立し売却したという経歴を持っています。

多くのスタートアップにとって興味深いテーマ、魅力的な登壇者であったようで、201人もの参加者が訪れていました。

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テーマとしては、それぞれのフィンテックスタートアップへの資金調達の経験についての話や、大手金融機関に対してどういうアプローチをするべきか、どのような人たちと一緒に進めていく必要があるのか、低い手数料が求められる中でどのように生き残っていくべきかなどが議論されました。

特に印象に残った内容は以下の3点です。

大手銀行と仕事ができるようになるまで18ヶ月はかかる

Fintechはスタートアップとしてのチャレンジもさることながら、金融業界特有のチャレンジに直面しています。Aaron氏によれば、「大手銀行と話し始めてから、実際にビジネスになるまで最低でも18ヶ月はかかる」のが事実ということで、さらに規制を乗り越えてライセンスを取得するなど、時間と体力が必要になってくるのが特徴だと述べました。その上で、「賢いFintechの起業家はその必要な時間を乗り越えるために様々な知恵を振り絞る、それは規制を破るということではなくて、例えばすでにライセンスを得ている企業の傘の下でビジネスを始めたりということだ」と答えました。Sheel氏も同意したのは、「Uberが無許可でタクシービジネスを始めて大きくなっていったような、ある意味無茶なやり方はFintechでは命取りになる可能性がある。例えば今後一生証券を触れなくなるといったようなリスクだ。そういうことにならないように、慎重に進めなければならないのがFintechだ」と述べました。

レンディングサービスが伸びたのはリーマン・ショックのおかげ

Fintechの特徴の一つとして、既存プレイヤーの巨大さというのがあげられるとAaron氏は語りました。「Google以前にはもちろん検索サービスがあったけれども、数百億ドルというマーケットがあったわけではなかった。Facebook以前にソーシャルメディアがあったといえばあったが、全くカネになっていなかった。Fintechのスタートアップが直面しないといけないのは、既存の銀行やクレジットカード会社という巨大なマーケットのプレイヤーだ。彼らをディスラプトしていくのは並大抵の容易さではない」。Fintechと一言に言ってもブロックチェーン、PFM、ペイメント、セキュリティ、アセットマネージメントと色々あるわけですが、その中でもLending Clubをはじめとするレンディングサービスでここまでスタートアップが進出したのは、「2008年のリーマンショックがあったから」だと言います。つまり、リーマンショックで大手金融機関が一気に貸し渋ったタイミングがあって、そのタイミングでスタートアップにチャンスが生まれて一気に広まった。そういう出来事でもない限り、「普通は入っていくのが難しい領域」という事実を起業家も投資家もよく認識するべきだと述べました。

ミレニアル:バズワードに惑わされず、スタートアップしろ

Fintechを説明するキーワードの一つとして、ミレニアル世代のことも話題に上がりました。Sheel氏からミレニアルについて聞かれたAaron氏は、「ミレニアルってなんだ、定義でもあるのか」と敢えて知らん顔。その背景には、「80年以降の生まれという恣意的な切り方をして弄ぶのは構わないが、上の層はブラウザに慣れ親しんだ世代、下はモバイルネイティブ。そのぐらいの違いは今の30代と40代にもあるわけで、ミレニアルなんて言葉に踊らされてる暇はスタートアップにはないはず。そんなことより、最終的にはコード書いてユーザの話聞け、Fintechと言えどスタートアップには違いがない、そういう風にYCでは言っている」と、非常に単純な真実を語っていました。

実際にフィンテックスタートアップへの資金調達の経験が豊富なお二人だからこそ、説得力のある内容でとても勉強になりました。今後もフィンテックに関する様々なmeetupに参加し、レポートをしていきたいと思います。