Alpaca技術ブログ

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株価・FXチャートの基本・ローソク足のアルパカ流徹底解説

こんにちは。インターンの加藤です。

実際に株価チャートを見た時、私が一番面食らったのは、ローソク足とよばれる赤と緑が入り混じったチャートの形でした。

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このチャートの形状は一般的にも敷居が高いと考えられているようで、例えばこの前紹介したRobinhoodでは、この敷居の高さを和らげるためチャートは一本の線で表されています。ただ、このローソク足は、日本が発祥であり、いろいろな考察が江戸時代から行われている非常に興味深いものです。

ディープラーニングなど最先端技術に取り組むアルパカですが、ローソク足のような伝統的アプローチにも着目しており、先月米国株向けにリリースしたAlpacaScanではローソク足パターンをスクリーニングの対象としています。本エントリーでは、ローソク足の基本からアルパカがなぜあえてローソク足に着目しているのか、AlpacaScanの利用方法までを徹底解説したいと思います。

目次

  1. ローソク足とは
  2. AlpacaScanとローソク足パターン
  3. まとめ

ローソク足とは

まずは、ローソク足の基本から説明していきます。ローソク足とは、株価や為替の値動きを、一日や一週間という単位期間を決めて、一目でわかるようにしたものです。

日本で最も有名なチャートの記述方法の一つであり、この値動きを表す棒の形がローソクに似ていることから、’ローソク足’と呼ばれるようになりました。

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ローソク足の形は「四本値(よんほんね)」と呼ばれる4つの値段から決まります。ある期間の中で、最初に取引された株価を「始値(はじめね)」、最後に取引された株価を「終値(おわりね)」、最も高く取引された株価を「高値(たかね)」、最も安く取引された株価を「安値(やすね)」と言います。

そして、終値が始値よりも高かった場合を「陽線」と言い、株価の上昇を意味し、反対に終値が始値よりも安かった場合を「陰線」と言い、株価の下落を意味します。

また、四角部分は「胴体」と呼び、その上下に伸びている線を「ヒゲ」と呼びます。上につくヒゲを「上ヒゲ」と言い、その先端が高値を表し、下につくヒゲを「下ヒゲ」と言い、安値を表します。

ローソク足は、単位にする期間によって呼び方が変わります。ローソク足一つで、1日の値動きを表す場合を「日足」、一週間の場合を「週足」、一年の場合を「年足」と言います。

ローソク足の基本形

ローソク足には9つの基本の形があります*1

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とてもシンプルな形をしていますが、胴体やヒゲの長短、位置などから値動きを視覚的に捉えることができます。一つ一つのローソク足からも値動きに関する情報は得られますが、組み合わせることでただの線のチャートより、その期間になにがあったかの情報を多く読み取ることができます。

ローソク足パターンの歴史

このローソク足、江戸時代に日本で生まれ、当時の米相場で使われていました。このような歴史的背景があり、ローソク足の組み合わせによるチャート分析を酒田五法、または酒田罫線法と言います。

これを編み出した本間宗久は江戸時代の米商人で、ローソク足の発案者だとされており、この酒田五法を用い莫大な富を得たと言われています。彼は、米の需給と価格の間には関係があるものの、市場はトレーダーの感情に大きく影響を受けるということを発見しました。 これは現在の株式市場においても同じことが言えます。およそ300年の時を経て、現在は日本国内だけではなく、’Candlestick Patterns’と呼ばれ世界中で使われる代表的なチャートの一つとなりました。

学術的な裏付け

この記事では、北米の一般的な棒グラフとローソク足パターンの比較をしています*2

北米の一般的な棒グラフと日本のローソク足パターンの大きな違いは、始値と終値の関係だ。私たちは昨日の終値と今日の終値の連鎖に注目するが、日本では同じ日の終値と始値の関係により興味を持っている*3

(中略)

両方のチャートから、あなたは全ての株価のトレンドを見ることができる。しかし、ローソク足の胴体の色を見ることで、あなたはもっと簡単に市場における日々の市場心理を読み取ることができる*4

一方で、この記事では、全てのローソク足パターンが同じようにうまく働くわけではないと言っています*5

全てのローソク足パターンが同じようにうまく働くわけではない。ローソク足があまりにも人気があるため、それが仇となり、ヘッジファンドやアルゴリズムによって分解され尽くしてしまったからだ。これらの十分な資金のあるプレイヤーたちは、人気のあるコンテキストで見つけたテクニカルな分析戦略をする個人投資家や伝統的なファンドマネージャーに反してトレーディングを行うために、超高速な約定をしている。他の言葉に置き換えると、彼らは奇妙に高い上昇や下落を探している参加者たちにトラップをかけるためにソフトウェアを使っている。しかし、依然として、いくつかの信頼できるパターンは存在し、短期や長期の利益を得る機会を提供し続けている*6

そして、実際にローソク足パターンが言われているような動きをするのかを103のパターンに対して研究しランク付けをした人がいます。Thomas N. Bulkowski氏です。彼は『Encyclopedia of Candlestick Charts』という本も出版しています。

AlpacaScanとローソク足パターン

AlpacaScanとは

弊社が先月リリースしたAlpacaScanは、アメリカ株7000銘柄の中から、特定のローソク足パターンに該当したものを一覧にしてお知らせするサービスです。毎日ほぼ決まった時刻(世界標準時の午前0時)にメールとツイッターで配信しています。

現在、AlpacaScanでは以下のローソク足パターンを、アメリカ株7000銘柄の日足から検出しています。(2016年6月13日現在)

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現時点では13種類ですが、日々グレードアップしています。

検証結果

このような話を聞くと、実際、このローソク足がどのくらい役に立つかを検証したくなりますよね。実際にAlpacaScanでもトラックしている、Bullish Engulfing(包み足)に対して為替ペアであるUSD/JPYに対してバックテストを行ってみました。発生してから1週間後、2週間後、4週間後で本当に上昇したかをパーセンテージで取得しています。つまり、長期的なシグナルとして利用可能かどうかを検証したいということになります。なお、過去一年間にUSD/JPYの日足の包み足は10から13回程度発生していました。

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これらの結果から、2013年では高い勝率をほこりましたが、2015年の勝率は悪く、年によって結果にばらつきがあることがわかります。この結果から簡単に結論を導き出すことは難しいのですが、基本的にローソク足パターン単体で勝負をするものではなく、インジケーターと同じように、市場相場のトレンドを想定したうえで、タイミングをとるものとして利用する必要があると考える事ができます。

AlpacaScan活用法

トレーディングにはwhat(どの銘柄を買うか)とwhen(いつ売り買いするか)の2つの要素がありますが、AlpacaScanには主に2つの使い方があります。

まず、whatに対して、アメリカ株7000銘柄の中から特定のローソク足に該当する銘柄をピックアップすることで、さらにその中から、自分の求める銘柄を選ぶことができます。毎日7000銘柄の値動きを全てチェックするということは人の手では到底できることではなく、機械だからこそできる機能です。我々のサービスはこれまでディープラーニングなどのかなりエッジの効いた最先端技術を使っていましたが、よりトラディッショナルな部分もフォローして、新しい手法と古い手法がうまく混ざり合って使えるサービスを開発していきたいと思っています。

また、whenに対して、ある程度銘柄を絞った上で、そろそろタイミングが来そうだが、いつだろうという時、最適な売買のタイミングを決める参考にすることもできます。特に中長期的に、この株価が上昇トレンドに入るだろうと想定した時に、ではいつ買うかという部分を調整する参考材料としての利用が想定できます。ただし、この部分はその銘柄の過去の挙動も参考に決めたいというのがユーザーのニーズだと思いますので、ゆくゆくはバックテストの結果も込で確認できるようにしたいと考えています。

実際の流れ

では、どのような流れでAlpacaScanを活用することができるのか、実際に弊社のサンマテオオフィスのメンバーがAlpacaScanを使って株を購入した過程をお見せしたいと思います。

まず、AlpacaScanから送られてくるメールとツイッターの情報の中で、買いサインであるBullish Harami(陰の陽はらみ)に注目しました。(2016年5月17日)

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この中から、RRCを選択。

理由は陰線に比べて陽線が長すぎず、上ヒゲがない(終値と高値が同じ)ということから、伸びるパターンだと推測できたからです。

AlpacaScanでは、ロジカルな条件を指定して銘柄を選別しています。なので、それぞれの銘柄によってばらつきがあります。 今回の場合は、SDRLはBullish Haramiの条件には当てはまっているものの、陰線と陽線の長さがほぼ同じになっていますが、逆にCJESは陰線に比べて陽線がとても短くなっています。CNXは陽線の位置が高く、すでに買い切られている可能性が考えられました。

また、AlpacaScanでは、取引ボリュームが大きい順に銘柄を並べています。今回は69銘柄が条件に当てはまったわけですが、取引ボリュームが多い順番でこの4種類の中で検討しました。

続いて、finvizを見て、大きな値動きの流れを確認しました。

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この図は2015年8月からのRRC株の値動きを表しています*7。 トレンドラインを見ると、年明けからぐーっと上がってきていることがわかります。

以上のことから、中長期的な流れにも逆らっておらず、また2、3日という短い期間のローソク足パターンにも買いのサインが現れているため、買いに入りました。

その後の結果は、

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予想通り、株価は上昇しました*8

毎回上記のように予想通り株価が動くわけでは勿論ありませんが、今回の流れの第一段階である、’7000銘柄の中から購入の可能性のあるものをピックアップする’というのがAlpacaScanの役割です。従来であれば、一つ一つチャートを見ながら探さなければならず、その手間が省けるのだと考えるとなかなか便利な機能だと言えます。しかし、その後他の情報も含めて検討することが重要です。最終的にはこのような判断も含めて、統合的な判断をAIができるようになってくるといよいよおもしろくなると思います。

まとめ

ローソク足は現在、最も有名なチャートの一つであり、トレーディングのタイミングを計るのに有効とされ、多くの活用法が解説されています。

しかし、株の売買は複数の情報を元に意思決定が行われます。なので、「このローソク足パターンが出たから、絶対に株価は上昇する!」というようなことはなく、他の情報と併用し、ローソク足パターンはあくまで意思決定に必要な複数の情報の中の一つの情報でしかない、と意識したうえで利用する必要があります。

*1:『株・FXに今すぐ活かせる チャートの読み方・使い方 ーローソク足のチャート・パターン』(https://www.nomura.co.jp/learn/chart/page7.html

*2:“Candlestick Charting: What Is It?“(http://www.investopedia.com/articles/technical/02/121702.asp

*3:A big difference between the bar charts common in North America and the Japanese candlestick line is the relationship between opening and closing prices. We place more emphasis on the progression of today's closing price from yesterday's close. In Japan, chartists are more interested in the relationship between the closing price and the opening price of the same trading day.

*4:In both charts you can see the overall trend of the stock price; however, you can see how much easier looking at the change in body color of the candlestick chart is for interpreting the day-to-day sentiment.

*5:“The 5 Most Powerful Candlestick Patterns (NUAN, GMCR)”(http://www.investopedia.com/articles/active-trading/092315/5-most-powerful-candlestick-patterns.asp)

*6:Not all candlestick patterns work equally well. Their huge popularity has lowered reliability because they’ve been deconstructed by hedge funds and their algorithms. These well-funded players rely on lightning speed execution to trade against retail and traditional fund managers who execute technical analysis strategies found in popular texts. In other words, they use software to trap participants looking for the high odds bullish or bearish outcomes. However, reliable patterns continue to appear, allowing short- and long-term profit opportunities.

*7:FINVIZ.com(http://finviz.com/)より

*8:FINVIZ.com(http://finviz.com/)より