Alpaca技術ブログ

AIと超高速データストレージを駆使して新しいトレーディングを創る

サンフランシスコで開催されたカンファレンス「startup.ml」のトレーディングにおけるAI・人工知能・機械学習の活用事例まとめ

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人工知能の波はトレーディングにも押し寄せています。

サンフランシスコにあるブルームバーグで開催された招待制イベントの”Machine Learning in Trading”(URL: http://conf.startup.ml/ml-trading/)にAlpaca CEO横川が参加してきました。

トレーディングにおける機械学習技術ということでかなりニッチなターゲットなのですが、このようなイベントが招待制で成立するほどに、機械学習や人工知能への注目度が伺えます。本イベントは、startup.mlという機械学習専門を育て上げる集団とブルームバーグが共同で開催しているイベントです。このイベントで発表された下記内容をそれぞれ紹介したいと思います。

  • Machine Learning Applications at Bloomberg: Gary Kazantsev, Bloomberg

  • Guarding Against Broken Backtests and Questionable Research in Quantitative Strategies: Steven Pav

  • Machine Learning Based Bitcoin Trading: Arshak Navruzyan, Startup.ML

  • Backtesting and Analyzing Algorithmic Trading Strategies: Justin Lent, Quantopian

  • Classification-based Financial Markets Prediction using Deep Neural Networks: Matthew Dixon, Illinois Institute of Technology

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Machine Learning Applications at Bloomberg

Gary Kazantsev, Bloomberg

ブルームバーグの機械学習技術責任者のGaryによるプレゼンテーションです。

ブルームバーグ上で無数に流れてくる情報が、株価の動きにどのように影響するかを過去の例から説明した上で、各株式銘柄のセンチメントをスコアリングした機能の紹介をしました。センチメント分析とはテキストマイニング技術を用いて、ニュース・SNSなどを解析して消費者動向・トレーダー心理などを分析する手法です。彼らはニュースを多数配信するため、そのニュースが読む価値があるかを判別して、ユーザーにスコアで知らせることが非常にビジネス的に重要です。

また、今後の方向性として、金融市場を分析するための様々な機能や情報をいかにパーソナライズした上で提供するかということで、グーグルの検索ボックスに近いインターフェースの紹介をしていました。近年のWebサービスのメジャートピックである。パーソナライズの波が機械学習を活用することで、トレーディングにもきちんと来ていることが確認できます。

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Guarding Against Broken Backtests and Questionable Research in Quantitative Strategies

Steven Pav

機械学習等を使った自動取引アルゴリズムの出来を検証するためには必須な、バックテストについてのみを取り扱った発表です。

こちらでは、クオンツヘッジファンドを運営していた数学者のStevenが、いかにバックテストを行う上で気をつけるべき内容として、過去データに対するオーバーフィッティングの問題であったりを、バックテストのクオリティを段階的に分けることでわかりやすく説明していました。バックテストの精度はアルパカでも非常に重要視しており、アルゴリズム作成の非常に基礎的な部分です。

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Machine Learning Based Bitcoin Trading

Arshak Navruzyan, Startup.ML

主催者のstartup.mlのArshakによる、startup.mlプログラム内で参加者と開発しているビットコインを使った全自動取引アルゴリズムの紹介をしていました。

ビットコインは、他資産クラスに比べても過去データ等の価格データへのアクセスが容易であることもあり、機械学習技術の実装対象としてとてもよい、ということでした。リアルタイムでそのアルゴリズムを走らせており、ビットコイン取引アプリケーションを出しているcoinbaseの取引アプリケーション上で発注されたり、ということを実演していました。ビットコインが機械学習の実験材料にもなっているのが非常に興味深いです。Alpacaでもキャピタリコでのビットコインサポートを検討しています。

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Backtesting and Analyzing Algorithmic Trading Strategies

Justin Lent, Quantopian

アメリカのミレニアム世代にも人気の、米株の自動取引アルゴリズム開発プラットフォームを運営するQuantopianのJustinによる発表です。

Quantopianでは、バックテストやポートフォリオ分析の仕組みをオープンソース化(Zipline: https://github.com/quantopian/zipline)しており、今回の発表では主にその使い方にして説明していました。Quantopianでは、人気のプログラミング言語であるPythonを使って自動取引アルゴリズムをウェブ上で開発でき、バックテスト等の膨大なデータを扱う処理もクラウド上で完結している、完全無料のサービスです。

Quantopianでは定期的に自動取引アルゴリズムのパフォーマンスを競うKaggleのクオンツ版のようなチャレンジがあるのですが、そこで申し込みされるアルゴリズムでも、過去データに対して機械学習で最適化されたアルゴリズムが、申し込み後のライブ市場ではパフォーマンスが大きく下落する、という現象を発表していました。

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Classification-based Financial Markets Prediction using Deep Neural Networks

Matthew Dixon, Illinois Institute of Technology

最後に、イリノイ工科大学で教鞭をとっているMattによる、トレーディングにおけるディープニューラルネットワーク適用についての発表でした。ネットワークの内容については発表では詳細にはふれていませんでしたが、単純な条件設定のもとでニューラルネットワークを活用した上での結果を発表されていました。大学における研究以外にも、ヘッジファンドと共同でディープニューラルネットワークを活用した自動取引アルゴリズムの開発にも携わっており、ディープラーニングがプロのヘッジファンドの投資運用戦略の一部として取り入られ始めているようでした。

今回のStartup.MLはFinTechの中でもトレーディング関連のテーマが多く、この領域での機械学習の適用がかなり進んできていると感じました。これまで機械学習にはあまり力を入れてこなかったQuantopianなどもここへ来て機械学習のアプローチを紹介するなど、機械学習なしではこの分野を語ることが難しくなってきている証拠だと思われます。また機械学習のみならずディープラーニングへの興味の高まりも会場からの質問等で盛んに見受けられ、アルパカの技術もさらに研鑽すべしと背筋を伸ばす気持ちです。

アルパカブログとして、この部分をしっかりキャッチアップして、今後も継続的に皆さんにレポートしていきたいと思います。